【③フリーランス・副業編】確定申告の進め方
会社員と違い、個人事業主やフリーランスには年末調整がありません。1年間の収入と経費を自分で集計し、税額を計算して申告・納付します。副業収入のある会社員も、一定額を超えれば同じ手続きが必要です。
在留資格によっては就労可能な範囲に制限があるため、税務の前に入管法上の適法性を確認してください。「技術・人文知識・国際業務」で本業以外の収入を得る場合や、留学生が資格外活動許可の範囲を超える場合は、税金以前の問題になります。
課税範囲を決める居住者区分については ①総論編 をご覧ください。
1. 確定申告が必要かどうか 状況 所得税の申告 住民税の申告 個人事業主・フリーランス(事業所得あり) 必要 確定申告で完結 会社員+副業所得が年20万円超 必要 確定申告で完結 会社員+副業所得が年20万円以下 不要 必要 2か所以上から給与を受けている 必要 確定申告で完結
もっとも多い誤解が最後から2番目の行です。「20万円以下だから何もしなくていい」は誤りで、住民税には20万円ルールが存在しません。市区町村への住民税申告は別途必要です。
なお副業所得が20万円以下でも、医療費控除などで確定申告をするなら副業分も併せて申告します。一部だけ申告しないことはできません。
2. 所得の区分 — 事業所得か雑所得か
同じフリーランス収入でも、次のどちらに区分されるかで扱いが大きく変わります。
事業所得 雑所得 青色申告特別控除 使える 使えない 損失の他所得との通算 できる できない 損失の繰越(3年) できる(青色) できない
事業所得と認められるには、独立性・継続性・反復性があり、社会通念上「事業」と言える実態が求められます。目安として、帳簿書類の保存があり、収入が一定規模に達していることが重視されます。副業の規模が小さく帳簿もない場合は、雑所得とされる可能性が高くなります。
3. 経費の考え方
事業所得の計算は「収入金額 − 必要経費」です。経費として認められるのは、売上を得るために直接必要な支出に限られます。
主な経費項目 外注費、仕入 通信費(インターネット、携帯電話) 消耗品費(PC、周辺機器、文具) 旅費交通費 会議費、接待交際費 地代家賃、水道光熱費 減価償却費(10万円以上の資産) 家事按分
自宅で仕事をする場合、家賃・光熱費・通信費のうち事業に使っている割合だけを経費にできます。按分の根拠は、面積比・使用時間比など合理的な基準で説明できる必要があります。
「家賃の50%」と決めたら、なぜ50%なのかを説明できる記録(間取り図、作業スペースの面積など)を残しておいてください。
記録の保存
領収書・請求書は原則7年間の保存が必要です。電子帳簿保存法により、電子データで受け取った請求書・領収書は電子のまま保存する義務があります。メールやクラウドで受領したPDFを紙に印刷して保存する運用は認められません。
4. 青色申告
事前に届出をすれば、青色申告を選択できます。
主なメリット 特典 内容 青色申告特別控除 最大65万円(e-Tax申告+複式簿記)/55万円/10万円 純損失の繰越控除 赤字を翌年以後3年間繰り越せる 青色事業専従者給与 生計を一にする家族への給与を経費にできる 少額減価償却資産の特例 30万円未満の資産を一括経費に 届出の期限 原則:適用を受けたい年の3月15日まで 新規開業:開業日から2か月以内
期限を過ぎると、その年は白色申告になります。開業したらまず「個人事業の開業・廃業等届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」をセットで提出してください。
5. 消費税とインボイス制度 納税義務の判定
原則として、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。それ以下なら免税事業者です。
ただしインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、判断が単純ではなくなりました。
インボイス登録の判断
免税事業者のままだと、取引先はあなたへの支払いについて仕入税額控除ができません。そのため、企業を主な取引先とするフリーランスは、登録を求められるケースが多くなっています。
登録する 登録しない 消費税の納税 必要 不要 取引先の仕入税額控除 可能 不可(経過措置あり) 事務負担 増える 変わらない
売上先が一般消費者中心(飲食、小売、個人向けレッスンなど)であれば、登録しないという判断も合理的です。取引先の構成によって答えが変わる論点なので、一律の正解はありません。
登録した場合、小規模事業者向けの負担軽減措置(納税額を売上税額の2割にできる特例)の適用可否も確認してください。
6. 暗号資産の取扱い
現行制度では、暗号資産の売却益・交換益は原則として雑所得となり、総合課税の累進税率(最大45%+住民税10%)が適用されます。株式の譲渡益(20.315%の分離課税)とは扱いが大きく異なります。
課税されるタイミングは売却時だけではありません。
暗号資産を別の暗号資産に交換したとき 暗号資産で商品・サービスを購入したとき マイニング・ステーキングで取得したとき
「日本円に換えていないから課税されない」は誤りです。
なお令和8年度税制改正大綱では、一定の暗号資産取引について20.315%の分離課税へ移行する方向性と、損失の3年間繰越控除の導入が示されています。制度が動いている分野のため、最新情報の確認が必要です。
7. 国外源泉所得がある場合
母国での事業収入、不動産賃料、証券投資益がある方は、居住者区分によって申告要否が変わります。
非永住者 — 国外源泉所得のうち、国内払い分と日本への送金分のみが課税対象 永住者(来日5年超) — 全世界所得が課税対象
来日5年を超えて永住者になった年から、母国の収入も日本で申告する必要が生じます。判定の詳細と送金の扱いは ①総論編 で解説しています。
国外で既に課税されている場合は、外国税額控除により二重課税を調整できます。適用は確定申告で行います。
8. 申告と納付のスケジュール 時期 内容 1月 支払調書・帳簿の整理 2月16日 〜 3月15日 確定申告・所得税の納付 3月31日 消費税の申告・納付 4月 振替納税の口座引落 6月・8月・10月・翌1月 住民税の納付(普通徴収) 7月・11月 予定納税(前年税額15万円以上の場合) 8月・11月 個人事業税の納付(該当者)
申告は税務署窓口、郵送のほか、e-Tax(マイナンバーカードとスマートフォンで完結)が利用できます。青色申告特別控除65万円の適用にはe-Taxまたは電子帳簿保存が要件となるため、実務上はe-Taxが標準です。
住民税の徴収方法(副業がある会社員向け)
確定申告書の住民税に関する事項で「自分で納付(普通徴収)」を選択すると、副業分の住民税は勤務先経由ではなく自宅に納付書が届きます。ただし副業が給与所得の場合はこの選択ができず、特別徴収に合算されます。
9. よくある質問
Q. 開業届を出していませんが、申告は必要ですか。 A. 必要です。開業届の有無と納税義務は無関係です。開業届は青色申告の前提として実務上重要ですが、出していないことが申告不要の理由にはなりません。
Q. 赤字でも申告したほうがよいですか。 A. 青色申告なら赤字を3年間繰り越せるため、申告する価値があります。また所得証明が必要な場面(在留資格更新、賃貸契約、融資)でも申告実績が効いてきます。
Q. 源泉徴収された報酬があります。 A. 原稿料・デザイン料・講演料などは支払時に10.21%が源泉徴収されます。確定申告で年税額を計算し、源泉徴収済みの金額を差し引くため、多くの場合は還付になります。
Q. インボイス登録番号は取引先に確認できますか。 A. 国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで検索できます。受け取った請求書の番号が実在するかは確認可能です。
次に読む ②会社員編 — 給与所得控除、年末調整、扶養控除 ④出国・帰国編 — 納税管理人、住民税、廃業手続き
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